渋沢敬三旧蔵の浅之助
伊勢こけし会だよりの91号に紹介された
現在は「国立民族学博物館」の所蔵という
中根 巌氏の撮影による
この浅之助、昭和四十年代に一度見たことがある。当時、西田峯吉氏より「文部省史料館」に浅之助があると聞いて、大田区の戸越銀座あたりから歩いて訪ねたような気がする。訪ねた経緯ははっきり覚えていないが、倉庫のような雑然としたところに民具などと一緒に浅之助があった。ロクロ模様は紫だった。しかし、一本だけの記憶しかない。「木の花・創刊号」で「文部省史料館」蔵品は「こけしのふるさと」(未来社)に掲載されているとあるが、これは誤りであろう。「こけしのふるさと」の図版は木村嵩氏旧蔵品である。「文部省資料館」にあった渋沢敬三旧蔵品は「伊勢こけし会だより」が最初の写真紹介のはずである。二本あったことは私も今回始めて知った。
文部省史料館には渋沢敬三のアチック・ミューゼアムの収蔵品が納められていた。宮本常一も昭和十四年ころこのミューゼアムに入所して働いたことがあった。渋沢敬三は日本中を足で歩く宮本常一に、民俗学資料の発掘、蒐集を期待していた。
この時代に民俗学の物的資料を系統的に集めようとした人は極めて稀有であった。