三十年ほど前に柏崎の岩下家を訪ねたことがある。通りに面した大きな文房具商を営まれていた。事前に「岩下祥児様」宛に手紙を差し上げてからお伺いしたが、祥児氏は既に亡くなられて息子さんの代になっていた。本名は岩下庄司、私は文献で知った祥児の宛名名を使った。奥様から「懐かしい宛名の手紙を頂いた。」と言われた。コレクションはお蔵の中にあって「痴娯の家」はその堂号。こけしだけではなく郷土玩具、さらに南洋の民俗資料も数多くあった。こけしも質の高いものが沢山あったが佐久間浅之助は逸品。日本に八本のみ現存が確認されているものの一つ。ご了解を得て写真を撮らせていただいた。「木の花・創刊号」に中屋惣舜が「八本の浅之助」を書いたが掲載した岩下蔵浅之助はこのときの写真である。