肘折の工人(1)
奥山喜代治 (昭和四十三年撮影)
奥山喜代治(昭和六年作)
奥山喜代治はふところの大きい工人だった。
私が高校生の時は葡萄液だったが、大学に入ってからはいつも秘蔵の濁り酒を振舞ってくれた。
喜代治自身は饒舌では無かったが、喜代治のかみさんが賑やかにもてなしてくれた。
私が注文するいろいろなこけしを喜代治は苦にせず一晩で何本も作ってくれた。
写真を撮りたいというと、気軽に戸外に出てくれたが、写す瞬間にポーズをぴしゃりと決める粋なところもあった。
写真のこけし昭和六年作は、父親の運七名義で送られてきたもの、
あるいは胴模様には運七の手が入っているかもしれない。
ぴしゃりと決まった表情は、粋な喜代治のもっとも完成された筆致。