木人子異叢

伊保内 史


今から三十年ほど前のことだ。京都河原町の古書店を巡っている時、ふと手にした支那の刊本「木人子異叢」は捜神記から聊斎志異に続く志怪小説の一種と思われるが、未だ聴いた事がない書名だった。保存はあまりよくなく、特に後半数葉が欠けていて奥付きなどもない。値段も安かったと思う、学生時代だったが気まぐれに購入したのだから。作者の木人子とは何者か、何時の人か不明。ただ官職名や地名表記から清朝の人ではないかと思う。刊本の形式もあまり古いものではない、おそらくその時代であろう。地名は蘇州あるいは長江下流あたりが多く、江蘇あたりにいた人かもしれない。中国の小説に詳しい前野直彬の「中国小説史考」(秋山書店)や中国古典文学全集「六朝・唐・宋小説選」の解説など調べてみたが木人子に関して見当たる記述はなかった。

長年そのまま放り出しておいたのだが、最近書斎整理の時に見つけて、読んでみると案外面白い。いくつかを訳出してみた。各短編の末尾には「木人子曰く」という編者のコメントがある。「史記」の「大史公曰く」に倣ったものか、中には教訓風で興ざめのものもあるが、そのまま訳を付しておいた。

·         邪気

·         宝瓢壷

·         愛音

·         雛苑

·         西門猴

·         林果

·         蕗籍

·         華陽楼

 


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